人気ブログランキング | 話題のタグを見る
♯22;がんばって絵を描きます『マシューバーニー 拘束のドローイング展』
行って来ました、久々に。 金沢21世紀美術館。
今回のお目当ては、マシュー・バーニー展です。

1) 「マシュー・バーニー 拘束のドローイング展」へ行く。
どうやら、展示を見る前に、映像を観ておいた方がより楽しめるらしい、
との情報をゲットしたので、まずは、シアター21へ。

[映像作品「拘束のドローイング9」]
「茶道」と「捕鯨」という、二つの日本文化にインスピレーションを得た映像作品。
マシュー・バーニー本人と歌手・ビョーク(マシューのパートナーでもある)が捕鯨船上で西洋の客人として登場します。船内で起こる二人の出会いと、デッキ上で作られる鯨に見立てた化石燃料のオブジェ。この二つが時間と共に変化していく様子を、独特の音楽とともにつづった「不思議なおとぎ話」だそうです。

はじめは、妙に不気味でセクシー(に見えた)な海女さんとか、舞台が長崎の出島(たぶん)なのに阿波踊りとか出てきて、いったい、ビョークはいつ出てくるん!?みたいな感じで、わけわからんかも、、、と思ってたけど、 だんだんと、知らぬ間に、夢中になって観てました。

舞台は日本なので、人も風景も見慣れたものばかり。なのに、何となく違和感を感じるのは、やっぱり、外国人から見た日本だから??ちょっとした何気ないところに可笑しさが潜んでいたりします。でも、それ以上に、マシューの日本文化に対する観察力の鋭さにびっくりしました。
私は特に、お茶会のシーンが印象的。
茶道は未経験の私は、きちんとした作法でお茶をいただくマシューとビョークに感動。外国人の日本文化に対する、関心の高さを垣間見ました。
お茶の道具も、茶碗や柄杓が貝だったり、海を連想させるものが多くて面白かった。

不思議なおとぎ話、と言うには、ちょっとショッキングだったけど、2時間半という長さをそれほど感じさせない映像でした。ビョークの歌声と、宮田まゆみさんの笙が印象的。
♯22;がんばって絵を描きます『マシューバーニー 拘束のドローイング展』_c0037576_224740100.jpg

[展示作品「拘束のドローイング1〜11」]
映像作品に関するものと、マシューのそれまでの作品(拘束のドローイング1〜8)、そして、新たに今年の6月に金沢にこもって作ったという作品(拘束のドローイング9〜11)がありました。

「拘束のドローイング」は描かれた結果(作品)だけ見たら、全然わけわからへん感じやったけど、モニターから流れる、描いている過程を見たら、マシューさん、すごいことやってるなあと思いました。

何がすごいって、ただ、絵を描くのではなくって、自分の身体に何らかの負荷をかけて、自分の意志ではちゃんとコントロールできない世界をつくり出して、そこから生まれるものを作品としているところ。
最初は???だったけど、途中で立ち止まって、上記のようなことを言われて、もしも自分が同じようにやってみたら、、、などと想像して、よくよく考えてみたら、、、、、
この人、すごいやん!!って思いました。
大概のアーティストは、こうゆう線をこうゆう色で描いて、ここはこんな形で、みたいな、アイデアを持って、それをそのまま書き表していると思うけど(それも推測にすぎませんが、、、)、「拘束のドローイング」は、思っていても違う結果になったり、自分の想像通りにはいかない世界だからねぇ。

トランポリンで跳んで、天井に絵を描いたり、ロッククライミングの要領で、10m以上の高さの壁に登って絵を描いたり、かなりたいへんそうなことに次々に挑戦するマシューの身体能力の高さにも驚きました。さすが、元・フットボールの特待生!!
とにかく、初マシューに目からウロコでした。

2) 金沢21美術館のもうひとつの名所!?茶室へ行く。
今回は初めて、美術館の敷地内にある、茶室にも足を踏み入れてみました。
捕鯨船上で起こる男女の出会いを茶道の「一期一会」になぞらえて描かれたマシューの映像作品を見てから、お茶室に行くと、なんだか感慨深いものがありました。

映像の中では、お茶室は船内の一室。でもその入り口は、人が正座してやっと入れるほどの戸口だし、床の間、湯を沸かすための囲炉裏、お茶会の主人が出入りするふすまなど、4畳半の世界が忠実に再現されていました。

敷地内の一角にあるお茶室は、近未来的な美術館の外観とは一線を画して、社会の授業で習ったようなお茶室をそのまま建築した感じ。美術館に比べたら、本当にこじんまりとしています。

実際に、小さな庭園を眺めながら、飛び石を歩いて進み、庵の中をのぞいてみると(註:庵の中には入れません)、そこはひっそり、静かな異空間。
室内には灯りはなく、薄暗いながらも、外からの微かな光が差し込みます。床の間には掛け軸。自然と気持ちが引き締まります。日本独特の文化がぎゅっと凝縮されたこの小さな空間に、私はとてもいい気分になりました。私もmy庵がほしいなあ。
♯22;がんばって絵を描きます『マシューバーニー 拘束のドローイング展』_c0037576_2216857.jpg

最初はよくわからんかったマシュー・バーニーの世界。
子供のために置いてあったガイド「リュウゼン博士による解説」にかなり助けられました。ちなみに、今回のタイトルもこの解説の一部「がんばって絵を描く人」からの引用です。
そんなこんなで、マシューは(合ってるかどうかは別として)自分なりの解釈によって、なんだかすごい人だ、ということが判明。
このオブジェ、エビくさいなあと思ったら、本物のエビが使われていたり、
マシューは本当の意味で、とても活動的なアーティストだなぁ、とか、
あの天井や壁の絵は、会期が終わったあともずっと残るのかなあ、とか、
ビョークとのコラボレーションには、逆「ジョンとヨーコ」!?なんて思ったり。
いろいろと、余韻が残る作品展でした。

それと、外国人の目から見た日本文化に触れて、
改めて、日本文化って素晴らしいなあと、思いました。
そして、もっと知らなきゃいけないことがたくさんあるぞ、と教えられたのでした。

[マシュー・バーニー「拘束のドローイング」展, 金沢21世紀美術館, 会期:7月2日(土)~8月25日(木)]
by saory91 | 2005-08-15 22:00 | 満腹記
<< 山下敦弘監督 『リンダ リンダ... チャン・ヤン監督 『こころの湯』 >>